その者たち、九つの世界より混沌を退けん。

行け、神より遣わされし二羽の烏に道を尋ね。

飛べ、神より授かりし銀馬を駆り。

 

序章 遭遇 -First contact-

 

…………

 

……

 

 

 「いてててて。畜生、いったい何なんだ。」

 俺が意識を取り戻すと、あたりは瓦礫で埋め尽くされていた。人の気配はない。

 確か俺は、学校帰りに路地裏で何か動くものを見つけて、その辺を探していたんだったか。いつもならそんなものは気にせずにそのまま放っておくところだがそのときは何故か妙に気になった。

 探している最中に急に表通りが騒がしくなったと思って出てきてみればこの様だ。多分、ビルの崩壊か何かに巻き込まれたな、これは。

 幸い、体に目立った外傷は無いようだ。あると言えば腕に軽い擦り傷ができたぐらいか。ここまでえらい目にあって奇跡的とも言えそうだ。

 その場に立ち上がってあたりを見回す。と、そのとき、またその”動くもの”を見つけた。

 「ん?」

 何のことはない。ただの猫だ。蒼い目の黒猫。俺はこんなやつを探して崩壊に巻き込まれたのか。けしからん猫だ。

 そうこうしているうちに、

 

 ピシッ・・・ピシピシッ!

 

 どうやらまた崩壊が始まったようだ。横のビル壁の亀裂がさっきより増えたような気がする。早く逃げないとな。

 と、また何故かさっきの猫が気になった。見ると、さっきと同じところでじっとこっちを見ていた。猫と目が合った。

 「おい黒猫。一緒に来るか。」

 「…………」

 「…………」

 「……にゃぁ。」

 別に良いそうだ。そんな気がした。

 「じゃあ俺は行くからな。お前もうまく逃げろよ。」

 まったく今日の俺は猫なんか気にかけてどうかしている。

 時々振り返りながら走る俺を、その猫はじっと見つめていた。

 

 バシッ!

 

 「っ!」

 とっさに見上げた俺の上に、ビルだった物の一部が浮いていた。世界の時計が狂ったかのようにゆっくりと、しかし確実に近づいてくる。俺は頭を抱え、その場にしゃがみ込んだ。今思えば情けない話だ。

 

 轟音。

 

 爆音。

 

 破砕音。

 

 ──ん?

 爆音?破砕音?瓦礫が落ちるときにそんな音がするか?

 ゆっくりと目を開けて見上げたその先に見えたのは──

 

──鈍く銀に光る傘を持った少女だった。

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